2011年1月12日水曜日

『年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)のガバナンス及び資産運用方針改善案』発表

年始に、GPIFのポートフォリオのネタを紹介しましたが、今回はそのGPIFがOECDから「先進国基準ではない」と指摘を受けている件

指摘されている事項を簡単にまとめると

1.厚生労働省がGPIFにかかわる範囲が明確でない
(強い影響力があるようだが、明示的でない)

2.CEOやCIOや監督責任者が存在しない。強いて言えば理事長にこれらすべての権限が集中している

3.その理事長の任命プロセスが不明瞭である

4.運用委員会が存在するが、その役割と責任も不明確
また、常勤の運用責任者が不在である

5.監査委員会が存在しないので、内部管理や監査状況が不明確である
リスク管理がどのようになされているのかもわからない

6.行動規範、利益相反規則、運用方針の文書公開が義務付けられていない

7.長期収益目標を賃金上昇にリンクさせている(意味がない)

8.日本国債に運用が偏りすぎ

9.外国証券への投資割合のシーリング(限界)設定が合理的ではない

などが主な指摘点です。

私も一読したときに、よくもまあこれだけ指摘事項があるものだと思いましたがGPIFは我々国民の大事な年金資産を運用する機関です。先進国の標準的なガバナンスに劣っているのだとすれば、それはゆゆしき問題です。

1~6番目の指摘事項は、年金運用の内部統制にあたる部分ですので、これは政治家によく勉強してもらい、すぐにも法律を改正して国会や政府のガバナンスが効くようにしてもらいたいものです。

一方で、8~9番目の指摘事項は痛いところです。
正直、資産運用のセオリーからいえば、指摘されている事項が全くの正論だと思うのですが、日本の国家財政(あるいは国債の大量発行)をGPIFが買い支えていることは明白な事実です。

いわゆるGPIFがグローバルスタンダードな資産運用を始めてしまえば、日本の国債市場が大幅に下落することは想像に難くありません。

その点は、OECDもよく理解しているようで、日本国債へのエクスポージャーを減らす際には、慎重さが求められると触れられています。

ただ、この点を解釈すれば、日本の国債はこうした国内年金基金が買い支えなければ暴落するということを、OECDも認識しているということの裏返しです。

国債を買えば、年金資金が成長しない
国債を買わなければ、保有している国債が暴落する

というジレンマに置かれている状況です。

GPIFの資産は、もとは我々国民一人一人の年金資産です。ぜひ関心を持って今後の動向に注目していきたいところです。

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